倒錯社賞、終了後講評

 では、口火を切らせていただきます。

 今回俺が投稿作を一通り読んで感じたのは、やはり何がどうなって「萌え」なのかわかりにくい作品が多いということでした。これは字数制限の影響が大きかったでしょう。オチの面白さが決定的な要素になるのかという話もありましたが、きれいなオチが付いている作品でも、女の子へのトキメキを描写できていないことがままありました。特に文章が上手いと思われる人でも、本当に「女性」というだけになっている場合があってとはnisemono_san氏の言ですが、そうは言わないまでも「かわいい女の子」としか書いてなかったり。
 俺が選考に挙げた15、16、20の3作品は、「その女の子にどのようにしてトキメキを覚えるのか」という点において他作品より優れた描写をしていたと思います。

 16は、まず第一にハルヒと嘉穂「っぽい」女の子を出すというルールの間隙を突いた裏技。そして、オチで主人公の少女の不可解な行動の理由が明らかになる構成によって、限られた情報量を一点の「意味」に集約しています。これこそ俺が言うところの「文脈の再解釈」です。最後の一行を読んだ瞬間に主人公のキャラクター性とヒロイン二人の関係性が一斉に再解釈されるわけです。それによって瞬間的に大きな情報量が生じる。2の作品などもオチで伏線が一気に回収される巧みな構成を成していますが、残念ながらそれがセミ子(仮)の再解釈には結びついていない、そこでセミ子のキャラとしての深みに限界が出たということですね。

 15は逆に張りっぱなしの伏線がちゃんと回収されていません。では、この作品を評価するポイントはなんなのかというと、物語の“過去”と“未来”を存在させていることです。そこに大きな妄想の余地が生じる。直接に描写しうる情報量に限界があるために、書かずに妄想させるという手が非常な有効性を持ったわけです。
 それでいて直接的な内容が薄いかというとそんなことはない。この作品の優位は文脈作りの巧みさにあります。すなわち、「仲睦まじい姉弟」→「仲良しの幼馴染3人組」→「背徳的な恋愛関係」という関係性の多段解釈です。これをただ「盲目の姉に見えないキスをする二人」を描いても印象は薄いのです。むしろ近親愛の関係を妄想させるような状態から遷移させることによって、より大きな効果を得ています。しかもこの流れの中で自然に、かつてものが見えていた頃の姉との関係、そして将来の3人の関係を照らし出している。長編小説が書けるでしょう。一段階の描写力に関して言えばこれより優れた作品はありましたが、それではキャラクターに深みがないのですね。

 単純な筆力において優れていたのは20でした。「あの子」の巧みな描写に加え、読者と同期する主人公の初々しい反応が一層魅力を引き立てています。うーん、こうしてみると百合ネタは単純に強いのかもしれない。ケチをつけるようなところもないんですが、あえて言うなら大雑把な期待感から一歩踏み出して二人がどんな夏休みを過ごすのか妄想させてくれるとより萌える気はします。掌編としてはまとまっていたので難しいところですが。

 今回は不遇をかこつことになってしまったイラスト投票の6ですが、sirouto2さんの講評にあるように、単純な画力とか見た目のかわいさではなく、「状況」、つまり意味を付与できていれば小説の中でも戦えたのではないかと思います。玉置勉強の乳という記事で書いたのですが(エロ漫画ネタで申し訳ない)乳の張りひとつが大きな“意味”を持ちうるのが絵の強みですので。

 

[natu3kan]倒錯社賞、終了後講評

小見出し、いいのかな? それとも見出しにして新しいエントリにしたほうがいいのかな?)

後出しじゃんけんみたいな話になるんですが、
女の子にビールという小道具配置が好きだったので
実は自分は6を推そうと思ってたのですが、
萌理賞の方で10p出されてたので、別の方にしようと。
絵の動きの有無よりも小道具の配置の方が萌えには重要な気がしました。
動きがあって、小道具も粋だったので6の絵に萌えたました。

9と17で悩んで、内容の薄い会話のキャッチボールに萌え、女の子になりたかったので9
13と15と18で悩んだ結果、お姉さんになりたかったので18に。世話焼きな娘っ子が好きなんで。
文章の書き方とか構成よりも配置されてる設定とか要素の方を優先しました。
選考基準は直感です。キャッチボールな感じが好きっていうのかな。
日常、っぽさというか。
webの性質上、改行が多い方が読みやすいのでそういう基準くらいでしょうか。
萌えは十人十色でいろんな基準があるというのが、今回の賞で判り
そして、いろんな萌えが発見できたので勉強になりました。
って、こんな感じでいいのしょうか?
自分は文盲なんで、技法とかレトリックとかムズカシイ話は他の人に任せた!