倒錯社賞発表

http://q.hatena.ne.jp/1151442461
http://d.hatena.ne.jp/tosakusha/20060630/1151660262より

投票者一覧

nisemono_san/zonia/REV/setofuumi/Vane/nisoku2/kagami/catfist/mind/natu3kan/Erlkonig

結果

01
03
04 ■■■
05 ■■
08
09
11
15 ■■■■
16
18
20 ■■■■■■

従って、大賞は20番・「無題(あの子がいた)」に決定し、tplusf氏に180ptを贈呈したいと思います。おめでとうございます。今後の展開はよくわかりませんが、意外と選考員の中でも混乱がおきず、今回はこういう形で合評することで、ある程度の判断基準の相対化ができたことがよかったのではないかなと楽天的に思っています。他のかたちでも、なにか合評することがあるといいなあと思っています。

20番へのコメント

  • カーテンを開ける→閉める→開けよう。という流れが美しいなあ、と感じました。カレンダーの使い方も上手い。人物二人の特徴付けもくどくなく良かったと思います。
  • sirouto2さんの言葉を借りれば、「いちばん小説的な文章力がある」。文章が主人公と相手の両方の性格を、客観描写に徹して、上手く描写している。選外の文章にあるような、文体が作品世界に入ることを邪魔することもない。良作。
  • 非常に完成度の高い作品だと感じました。少ない文字数の中で二人の登場人物の対照的な性格がしっかり描写されているので、この二人にこれから起こる出来事に対して想像力が喚起されます。文章の流れも良く、読みやすさという点においても、レベルの高さを感じさせる作品でした。
  • 何気ない日常の一コマを情感を込めて描けている。自然を感じさせる描写力が一番強いと思います。本作を一番に推薦致します。
  • 次点としてこちらの作品を推薦します。15は短い文章に文脈を作る技術において優れていましたが、対照的に瞬間のスナップショットとして優れていたのが16及び20でした。16は外部データベースまで引っ張り出してきて反則ギリギリっぽいですが、全てのデータを最後にスパークさせた際の爆発力は素晴らしいものがありました。でもよく考えてみると夏でもなんでもないので、薄着で丸焼けな少女でベタに夏を演出した20に一票を投じさせていただきます。
  • さわやかに投票。中学生? きっと、あの子も気にしてくれていたのでしょう。女の子同士の友情?の予感。ストレンジャーとして越してきた心細いこの土地でも、ドキドキワクワク冒険の夏休みになりそうです♪

作者さんのサイト

[catfist]

いち選考員として反省の弁になりますが、倒錯社賞のほうでは実質nitino氏のイラスト投稿が無視された形になってしまいましたね。やはりイラストを募集するならするで別に選考枠を設けるべきだったのではないでしょうか。各人選考結果に後悔はないものと思いますが、何とも申し訳なく……。

[REV]

 一選考員として申し訳ないけれど、やはりイラストと文章を同枠で選考することに無理があったのかもしれません。イラストにどなたかが文章をつけるとか、逆にどなたかの文章にイラストをつける、という形であれば、シナジー効果が期待できたかな。

[nisemono_san]

「某川賞」の選考後とかこんな感じなのかなあ。俺自身としては、イラストの難しさというのは、ある一定の労力がかかるよなあという側面が。いや、小説も労力はかかるけれども、載せたりとか編集したりとかする労力がイラストと比べると別ベクトルなので、そこの辺り、sirouto2さんは垣根をなくしたかったんだろうけれども、いや敷居ありすぎるでしょう、という感じになるのかなあ。

[natu3kan]

文字と絵を比較するのは難しいですね。
あと、絵の垣根の高さってのは手間というより、絵をさらすハズカシさかと。
ラフ切るだけなら塗るより時間がかからないし、早い人なら一時間とかでおわっちゃうと思うんですけど。文章と違って、共通の基準が文章より大きいというか、差がわかりやすい(有る程度の写実性があるかないか)ってのもあって見せるとなるとやっぱり恥ずかしいと思うんですよね。
オタクなら絵を描いた経験がある人、絵を描こうとした経験の有る人は結構いると思うんですけどいざ、他人に見せるとなると恥ずかしいというか。
潜在絵師の数が多いけれども、今回投稿してくれた方くらいの技量レベルになると、かなり数が減るかー。
追記:漫画の方がイラストよりある面で難しいし、時間かかって手間ですぜ。カットの切り方とか。

[zonia]

うーん、やっぱ厳しいと思いますねえ。すごくインパクトのあるものならあるいは、とも思いますが、そうそうあるものでもないし。ライトノベルっぽく本文+挿絵、とかいっそのこと漫画にしてしまうとか、そんな手もありそうですが。

[sirouto2]選考&投票ありがとうございました。

そして何より協賛頂いた倒錯社に感謝致します。
…それで、イラストを一緒にするのはどうか? という意見はもっともですね。ただはてなで募集するのでイラストの比率は低いと思ったし実際一人だったので、別に賞を設けると一人応募で一人受賞みたいになってしまうので…。でもやはりイラスト賞はあってもいいですね。あと、マンガや動画や音声も含めたりして。

[mind]

 私もこのたび、選者という貴重かつ興味深い体験をさせていただき、光栄に存じます。
 イラストの件ですが、コメント欄でnitinoさんもおっしゃっているように、萌え表現の可能性はむしろ深いですよね。REVさん指摘のように、メッセージ/コピー/一行ポエムなど付加すると、最強パターンかも知れません。
 あと、選考基準なんですが、自己満足/内輪の馴合いではないコンテストの形式を採る以上、なるべく明確に示してあげた方が親切ですね。専門家から視た「ここはこうすれば萌えるはずだ」という理論と、「なんでか上手く言い表せないけど、とにかく萌えた!!」と読者アンケートで1位をとる作品とは自ずとズレてくるはずですし。そうすると、「ボクたち」が求める「萌え」って何なんだろう…てな内容について、公開雑談しながら選考を進めるのも良かったのかな、と思いました。何度か選考手続を繰返せば、書く方も読む方も、○○賞受賞作品のツボというか作風の共通認識が形成されてくるはずなんですけど。というか、次回応募者さんたちのために、ここら辺のテーマについて話を深めていったらいいんじゃないでしょうか。

[catfist]

同感です。というか、選考基準についてのイイワケは自分のダイアリーでやろうと思ってたんですが、全員で反省会するならネタはとっておいたほうがいいですね。

[natu3kan]

それいいですね! こうして考えると意外と議題に困らないもんですね。とふと思った

[sirouto2]アンケート化

選考基準で万人が納得できるようなものは、端的にないんじゃないですか。ミステリはノックスの十戒とか比較的ルールが明確な方だけど、それでも清涼院が出てきたわけで。結局最後は理屈抜きでアンケートで市場に選ばせる、というところに落ち着くのではないかと思われます。萌理賞もアンケートの導入を検討していましたが、ポイントゲッターが多くて非効率だったので。ただ自前の集計装置ができたから、次回はアンケートの比率を高めようかなと思っています。

[catfist]透明性

万人が納得できる基準なんて必要ないと思いますよ。俺が言いたいのは、参加者にはどういう理由で自分が選ばれ・選ばれなかったのか知らせるべきだというのと、こいつをダシにしたら有意義な議論ができるんじゃないかってことです。

[mind]「ボクたち」が求める「萌え」って何なんだろう

 うーん、「萌え」作品★内容の基準、しかも統一基準というと非常に難しいんですが、
<「ボクたち」というか、★選考 者 達の目指す方向が、

  • ここにいる編集会議の人

 →内輪化/自家撞着

  • なんらかのターゲット読者層

  <オタクなのか一般読者なのか。

    • オタク/サブカル向けの独自路線 ――;『ガロ』みたいな?
    • 多数読者を煽って一定方向に導きたいのか ――;『ハルヒ』みたいな?
    • 多数読者の後追い/迎合でリスクを減らしつつアクセスを稼ぎたいのか

 
 とかいうふうに、一応の路線方向は考えられ。
それが○○賞のタイトル名に結びつけられて明らかになっていれば、
投稿者の方も、無駄にガッカリすることが減るのではと。
 
 そこまで話し合いでまとめていくことが出来なかったとしても、「ボクはやっぱり玉青ちゃんだよ!」「いや、髪を切ったそばかすロードレもなかなか…」*1てなふうに、選考者の嗜好/指向が晒されていると、投稿者の方も狙いが定まります。
 「透明性」…というか珍獣,囚人,安い魚…とかキャラを立たせておくと、ここの会議のコンテンツ価値も上がるのではないかな…なんてね。*2

[sirouto2]透明性などない

ええと…、予備校の模擬試験ではないので、既存の賞にも透明性なんかないですよ。ほとんどの作品は下読みの段階で落とされて、なぜ落とされたのかの理由を問い合わせても分からない。まあもっとこじんまりした集まりなんで、それでは不親切だろうと少なくとも初回は、どういうのが良くて悪いのかを講評で示しましたけど。あと募集する前にあらかじめ基準を示しておくと、萎縮する面もありますし杓子定規な感じで、必ずしも良くなるとは限らない。

[catfist]透明性≠公平性

 いつも説明が足りなくて申し訳ないんですが、俺としては公平性は必要ないと思ってます。結果は結果ですし、別に参加者の不公平感を解消しようというわけでもありません。何が良かったのか悪かったのか、どうすればもっと良くなるのかということを話し合うことでこの催しを誰にとっても意義あるものにできるのではないかという提案です。確かに基準を明確にしすぎることで硬直化する懸念はありますし、むしろ相対化する方向で、結論めいたものを出さなくてもいいと思いますし。
 別に作家を発掘して商売しようというわけでもなし、今回選ばれなかった方々にも何がしか得るものがあるといいと思うんですが、いかがなものでしょう。

[mind]

 既存の△△賞とかでは、逆に不透明のベールに隠して神秘性カリスマ性を演出しているということなのかな? まあ、受賞作品を並べてみれば、自ずと求めている賞の傾向と対策が滲み出てくるということなんだろうけど。
 それでも、一応の基準について合意を造っとく方が、open source的な感じがして、私は好きだな。その話し合いが、(たぶん)決裂するんだろうけどw、その過程で選考側のキャラたちの性格とか嗜好が表に出てくれば、応募者にとっては判断材料にもなるし、観ているだけの人も楽しめそう♪
 基準というと難しいけど、目的というなら大丈夫? 目的からある程度は基準を推測できるので。たとえば、「ネットに埋もれている才能の発掘」とか、ぁ、もう書いてあったか。。ほかにはどんなのがあるかな… たしかに、萎縮したり杓子定規になっちゃうのかな。わざと求めている方向を言葉では明かさないで推測させて、意外性をもった作品が出てくることに懸けるという作戦もありか。
 というか、私も、選考の際に悩んでしまったのです。賞の目指すところの目的や基準が在れば…。技術的な面からすると、そもそも審査員の資格に欠けていたわけですし、自分の嗜好を押し出すのも何か違う。「一般」読者に成りきるのも、どこらへんの読者層を想定していいのか…と。

[mizunotori]

sirouto2さんはsirouto2さんの基準で、公開編集会議では公開編集会議の基準で、選べばいいのではないでしょうか。別に両者が基準を統一する必要は無いでしょう。sirouto2さんは不透明な基準で選考すればいいし、倒錯社賞は透明な基準で選考をすればいいですよ。そうすれば差別化が図れて良い感じです。
それで倒錯社賞の選考なんですが、ひとりひとりが投票して一位を決定するより、公開編集会議のメンバーが話し合って一位を決定するという風にするのはどうでしょうか。もちろんその過程は公開して。一般的な文学賞もそうやって決めてますよね、たぶん。
一個人の投票で決定されるのが萌理賞、複数人の議論によって決定されるのが倒錯社賞、複数人の投票によって決定されるのが萌理賞アンケート、という風に差別化を図れればますますいいなぁと思いました。

[sirouto2]小説は科学ではないのでそもそも透明性自体がない

そういうことではなくて…、例えば数学の証明なんかは透明性というか客観性があると思いますけど、小説というのは公式を暗記して書くわけではなくて…例えば「○○の部分は175字で〜」といえば透明ですけど、ふつうはそんな物差しはないです。良い批評は一つの作品ごとに、その作品世界に基づいた内在的な基準で喋っていて、しかもそれは読む前には存在しないのです。マークシートを規則に従って機械的にふるい分けるようなことではないわけですね。賞によっては点数とかつけるから、あたかもそういう規則が事前に存在しているかのような印象を与えるけど、それは錯覚です。でもそういう原理論じゃなくて、もっと簡単な話に落とし込めば、選者の偏向はなるべく明らかにした方がいいのは同意します。ガロは「普通の作品は投稿しないでください」とかいってますけど、そういうことですね。それでたくさん読む立場から言うと、冗長なのは嫌ですね。

[catfist]

良い批評は一つの作品ごとに、その作品世界に基づいた内在的な基準で喋っていて、しかもそれは読む前には存在しないのです。

 同意します。公開編集会議では公開編集会議の基準でというのも異論ありません。次回、あるとしてですが、その基準については合議で決めればいいと思います。決めなくてもいいと思います。俺の希望は「何が良かったのか悪かったのか、どうすればもっと良くなるのか」ということを明らかにすることです。自分の思うところに関しては、ま、自分のダイアリーでやってもいいんですが、メンバーの意見も聞いてみたいので、どうかなーと。これだけ作品が集まったのでもったいないなーと。

[Erlkonig]「ある作品に対する最良の評価方法はその作品に固有である」

というスタンスを取ったときの一案として、評者たちが倒錯社賞の評価基準に合わせて自分の評価を下すのではなく、評者たちそれぞれの評価基準によって下された評価が結果として倒錯社賞の方向性を決定付ける(それか、そもそも賞に一定の方向性を設けない)という向きの考え方はどうでしょう。この評価方法の場合、多数決によって「賞」の順位を与える意義が減じますし、明確な評価基準がないので書く方を迷わせることにもなりますけれど。

[mind]

>書く方を迷わせ
 て創作者をジタバタもがかせるままにしたほうが、創作者の可能性を引き出せる、とも思ったのですが、やはり、手がかりを多めに与えた方が、敷居が下がってよろしいのではと。応募者の狙う方向、選者の期待する方向が観えてこそ、意図的に「定跡外し」技を仕掛ける複雑な可能性も出てくるわけですし。
 
>選者の偏向はなるべく明らかにした方がいいのは同意します。ガロは「普通の作品は投稿しないでください」とかいって
 そうですよね、選者のキャラクターと、作品をinputした場合の言動変化が手に取るように解ると、内輪でないインタラクティブな感じで好ましそう。そういう雑誌というか雑談みたいなblogにすると、動物園みたいな珍獣展示場になる予感…;|||
 
>「何が良かったのか悪かったのか、どうすればもっと良くなるのか」ということを明らかにする
 もしよろしければ別の日付でスレを立ててくだされば、私も参戦しましょう♪

[zonia]

 参考までに他ジャンルの話をします。クラシックの世界には、統一的な、「これがクラシックの中における最良の賞」みたいなのは存在しません。いろんな権威のある人たちがそれぞれにコンペティションを開いて、自分の感性の中で最もよいと思われるものを賞に選んでたりします。
 と考えると、選者の嗜好を公表するというのは要するにそのコンペティションの方向付けそのものってことになるんですよね。で、そっからどうするか、という話なんですが。萌理賞萌理賞で考えてやっていただければ、というのは確かにそうなんですが、個人的な希望を言えば、既存の(商業の)賞にはないような特色がほしいなあと思いました。1つ1つ講評することが選者の嗜好を公表することになる、というのも1つありますし。
 倒錯社賞については、うーん、最終的な選考方法はやはり投票が一番効率がいいような気がするので、その後の「何が良かったのか悪かったのか、どうすればもっと良くなるのか」の議論を重視するのがいいのかなあ、と思いました。でも

評者たちが倒錯社賞の評価基準に合わせて自分の評価を下すのではなく、評者たちそれぞれの評価基準によって下された評価が結果として倒錯社賞の方向性を決定付ける(それか、そもそも賞に一定の方向性を設けない)という向きの考え方

というのも面白そうだなあ。

*1:誰だよボクってw

*2:珍獣観察: うちの母校の職員室がガラス張りだったことを思い出したw